大工塾ネットワーク「杢人の会」
コラム

毎回、担当の大工が日頃考えている疑問や悩みを本音で綴っていきます。

大工の本音

建築工房 富澤:富澤博之
富澤博之


10:作業場考
30:大工が自分の家をかまいだすと…
52:答えはどこに

■答えはどこに

暮の忙しいときになって6〜7年使ってきたインクジェットプリンターの具合が悪くなった。
マニュアルに書かれているクリーニングやメインテナンスをしても直らず、ネット上に書き込まれていた裏ワザ的な方法を試してみるものの一向に改善はみられない。

最後にメーカーのサービスセンターに問い合わせてみたのだがその回答に唖然としてしまった。
私の様な症状の場合プリンターヘッドの交換が必要になるそうなのだが、この機種は販売停止から5年が過ぎているため、すでに部品供給は打ち切り修理不能。新たに買い替えるしか方法はないとのこと(ネット上では海外逆輸入品が販売されているが現行新製品とたいして値段が変わらない・・・でも海外では部品供給されているこの矛盾)。

たった5年で・・・信じられないと思いつつも調べてみると、近年のいわゆるデジタル製品のサービス体制はどれも似たり寄ったり。
つまり良いものを長く使うなどという発想は、ことこれらの商品には持たぬ方が得策ということになる。

確かに最近ではこれほど極端ではないにせよ家電や車などの修理も一つ一つ直すのではなくユニットをそっくり交換した方がかえって安く、その勘定が合わなければやはり買い替えといったケースもままあるそうだ。

世の中全体がメインテナンスなど手のかかる方法を避け、不具合があれば熟慮もせぬまま使い捨て、そんな風潮になってはいないだろうか(長期経年車自動車税の重課算など政府が主導しているものさえある)。

自分が携わってきた住宅建築は、木材など建主みずからメインテナンスしやすい素材を多く使い寿命を延ばすことができれば最初多少出費が嵩んでも、長い目で見ればむしろコストは安くなる・・・その信念でやってきたつもりだが、もしかしたらこうした考え方はすでに時代遅れになってしまっているのかもしれない。

しかし現在の住宅は以前のように木や土といった自然素材だけではなく、むしろ石膏ボードなどのように解体処分時には管理型処分場にて保管しなければならない素材が多用されている。
住宅を長寿命化するということはそうした厄介なゴミの排出抑制になり、その負荷を減らすことにつながる。

これまでかかわってきた住宅建て替えのケースでは、30-40年といった高度経済成長期のいわゆる新建材を多用した家が多く、それよりも古い場合はむしろできる限りリフォームして使い続けたいという声が多かった。
その分岐点はどこにあるのかと考えたとき、その素材を長い間使い続けることが飽きになるのか、あるいは愛着になるか、そこではないかと私は思う。

すべて自然素材を使った住宅であれば環境負荷も最小限に抑えることができ、より飽きのこないものにすることができるのだろうが、ある程度の快適性、コストバランスを考えるとやはりまったくゼロにすることは難しい。

その妥協点をどこいらに見出すのか、日々逡巡し迷っている。


2014.1.6


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