大工塾ネットワーク「杢人の会」
コラム

毎回、担当の大工が日頃考えている疑問や悩みを本音で綴っていきます。

大工の本音

建築工房 富澤:富澤博之
富澤博之


10:作業場考
30:大工が自分の家をかまいだすと…
52:答えはどこに

■大工が自分の家をかまいだすと・・・

一昨年前より自宅(新築)をかまい始めて足かけ3年になる。
が、いまだ完成していない。

特別、凝った仕様であることもなく、とんでもなく大きいわけでもない。単にそこに関わっている時間が短いので一向に事が進まないのである。

だいたいにしてそのきっかけがまずかったのかもしれない。
当初、予定していた仕事がいくつか続けて延期またはキャンセルとなり、このままではジッと指を咥えたまま待たねばならぬ事態に陥ることになることが容易に予想できた。

さてどうしたものか。
そういえばカミさんが「風呂場がもう限界。どうして大工の家なのに戸が閉まらないところに入らなければならないの!窓も外れるし!(別に見られて減るような代物でもなかろうに・・・)」と始終ぼやいている。
居間は薪ストーブがあるものの、ガンガン焚いても室温は一ケタまでしか上がらない。
手直ししようにも、基礎はなく、土台も朽ち果ててほとんどない。耐力壁になりうる壁など存在しない。
多分、次に大きな地震が来れば崩れてしまうのは明らかだ。

こうなったら、いっそのこと新たに建ててしまった方が、ことが早いのではないか。
そう思って見回してみると、予定していた工事のために仕入れておいた材料(柱、梁など)はある。造作用の鴨居等も工場内を探せばありそうだ。
とにかく刻んで建ててしまうまではなんとかなりそうだ。そうだそうだやっちまえ!

そんな先のことを考えずに始めてしまった工事であるから、当然のことながら途中で資金繰りが行き詰る。日々の生活費も稼ぎださなければならない。
別の仕事が入ればそれをこなし、仲間の応援に出かけては資金を稼ぎ出し、合間を見つけてまたかまう。
そんな具合でしているものだから、工事の方は遅々として進まない。
そうこうしているうちに長男は全寮制の学校に入り巣立ってしまった。
もしかしたら完成する頃には、子供たちはいなくなって夫婦二人だけになってしまうかもしれない、そんな冗談も笑い飛ばせなくなりつつある。

世の中の景気はともかく、我が周りだけでもという自分勝手な考えは通用しないということが昨今の受注具合から明らかになってきた(今更・・・)。
皆の気持ちが高揚し、パーッと使ってもいいのかなという声が多数になってきたときに、その中のゴクゴク一部の奇特(失礼!)な人が、どこかで私の名前を見つけて、仕事の話を持ちかけてくれるのだという、ごくごくあたり前の経済の仕組みが、今になってようやくわかってきた。

果たして このままサグラダファミリアのごとく永遠の未完成となるのか。
あとは運を天に任すしか選択肢はなさそうだ。
あぁ神様仏様お施主様どうか迷える子羊に救いの手を!


花

2011.3.1


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