大工塾ネットワーク「杢人の会」
コラム

毎回、担当の大工が日頃考えている疑問や悩みを本音で綴っていきます。

大工の本音

有限会社 村上建築工房:村上幸成
村上幸成


02:工務店の家つくり
21:職人不足
42:職人の打ち合わせ

■工務店の家つくり

 住宅を建てるときにつかう建材の種類が大変増えていると感じます。今まで現場で職人が加工し作っていたものが建材(商品)として販売されたり、法律が改正された(10年保証など)ために商品開発されたりしています。このような建材を組み合わせて住宅をつくるようになってきた背景には、いくつかの理由があります。

1.法律の改正(※住宅瑕疵担保履行法
 2000年の品確法で、新築住宅の構造耐久上主要な部分と、雨水の浸入を防止する部分の瑕疵(欠陥)を10年間保証しなければならなくなりました。台風の時などは 防水テープやコーキングなしで雨漏りを完全に防ぐのは非常に難しいのです。多少雨が入ってしまいます。

2.住宅の価値基準
 車や家電などと同じ感覚で住宅を選ぶようになってきているのではないかと感じます。数値化しやすい断熱気密等の数字を上げるために、建材を使うといったような家のランク付けに利用されている、短いスパンでの性能評価には大変有能な商品が多くあるからです。

3.施工者の利益の確保がしやすい
 施工者側にとって、定価や仕入れ値がはっきりしているので 利益の確保がしやすい。また、性能や価格の点でもカタログやパンフレットにのっている商品の説明は、お施主さんにも受け入れやすくやりやすいものです。
 しかし、このような家作りには問題点が多く大工工務店としては流されないような家づくりをしたいと考えています。

建材を多用した家づくりが多くなった結果次のような事柄が生じてきました。

1.土に還らない家づくり
 建材はメンテナンスフリーや長期耐用年数を目指しているため、解体材は埋め立て処分せざるを得ない=土に還らない建材が圧倒的に多い。
 無垢材は長い年月をかけ自然が土に還してくれますが人工的に作られた建材はゴミになるだけです。

2.建材メーカーの偽装問題
 昨年は大手建材メーカーが耐火性能を偽り国土交通大臣認定を不正取得していたことが明るみにでました。

3.大工技術の低下
 住宅をつくる場合、総額予算が決まっているのがほとんどで、建材に予算を多くとられてしまう。必要な工事にお金をかけられず、職人の技術はもちろん、教育や意識の向上につながらない。
 単なる製品を取り付ける作業員になってしまう。ものづくりをしている意識が希薄になってきている。




 大工工務店としてはどのような家をつくっていったらよいか、大事な問題です。建材を多用し性能を競い合うのではなく、長い時間かけて検証されてきた木や漆喰、石の再評価(耐久性・施工性・リサイクル性)をし、積極的に取り入れることが必要だと感じます。そして 大工工務店が得意とするものづくりで 自信を回復し、クレームを恐れないこと。そして、建材(商品)をお施主さんに売って中間マージンを取るという商人的感覚から抜け出し、モノを作って利益を出す意識が大切です。自分のつくった『もの』の値段を自分で決めるのはとても勇気のいる作業ですが、避けて通ることはできません。それをお施主さんに説明し、納得してもらわなければなりません。職人にとっては苦手な作業ですが、それをしないとこれからの家づくりはできないと思ます。

2008.11.6 


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