大工塾ネットワーク「杢人の会」
コラム

毎回、担当の大工が日頃考えている疑問や悩みを本音で綴っていきます。

大工の本音

有限会社 宮一技工:宮内一利
宮内一利


01:建築の行方
20:予算と期待度
37:「ありがとう」
41:サボるアリ

■サボるアリ

 サボるアリがいるらしい。
 アリといえば「勤勉」の代名詞にもなる生き物だが、中には行列に加わることをよしとせず、ウロつき、傍目にはサボっているように見えるアリがいるという。
 しかし、そういう一見サボっているようなアリにもそれなりの役割があるそうな。時に新たなエサを見つけ、また時にエサから巣への新しい近道を見つけ出すという。


 高校時代からの友人と先日居酒屋に出かけた。
 彼は今、小学生のサッカーチームのコーチをやっている。しばらくして舌も滑らかになった彼がコーチングについて言った。
「言うことをきかない子供はオレは絶対に使わない。どんなにうまくても、遅刻をしたり指示通り動かなければレギュラーから外す」と。私は疑問を呈した。
私らが通っていた高校は今考えれば信じられないほど緩やかであった。メタル野郎だった彼は金髪の長髪だったし、飲酒・喫煙にも有り得ない程寛大だった。また、仲間同士の非道にもお互い許しあってきたのではなかったか。
それなのに子供らには画一性を求め、軍隊的に上下関係を強いるのか、と。
 彼はこう応じた。
決して自主性をないがしろにするつもりはない。ただ、その先にどんな世界が広がっているのかも知らない者にはそれが何を意味するのか理解し得ないとしても、まず基本的なことを教えていくべきではないか、と。

 基本的なことを身につけ、その世界の地平の広さをある程度知った後に自身の考えで他者と異なる動きをすれば良い、ということなのだろう。サボるアリは他のアリが何をしたいか、しようとしているのかを知り、そのうえでサボっているような動きをしているのだろう。しかし、その存在がその個体の所属する集団に新たな展開をもたらすのではないだろうか。

 私は、この職人の世界の地平を知りうるものでは全くない。しかし今さら何者かに従順になって生きていくというのもここまで反抗的に生きてきてしまうと正直難しい。とすれば、周囲にどう思われようと「サボるアリ」として生きていくしかないのかもしれない。

 ビクビクしながら・・・・。


photo

ひとり歩いたドイツの街角にて

2011.11.10


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