大工塾ネットワーク「杢人の会」
コラム

毎回、担当の大工が日頃考えている疑問や悩みを本音で綴っていきます。

大工の本音

久良工務店:久良大作
久良大作

06:覆い隠すものと覆い隠されるもの
27:改築という仕事
40:夫が大工になって
48:ブリコラージュな生き方

■ブリコラージュな生き方

必要にせまられて作業場に刻み場を増築した。これで3棟目。1棟目は単管とクランプで骨を組み、屋根に波板、外壁に杉板を張った。2棟目は大工の訓練生が学校で作った卒業制作を貰い受けて改造したもの。そして今度の3棟目は杉の20センチ角の柱3本と貰い受けた古材の長尺梁で掘っ建てでつくった。行き当たりばったりでつくってきた3棟に統一感は全くないが、コンセプトはある。手持ちにあるもので、できるだけお金をかけずに簡単に作り、簡単に解体できること。借地はいつか返さなくてはいけない。そのときに多大な手間がかからないことは大切なこと。単管も軸組も古材もすべて譲り受けたもの。木材は在庫品、買ったものは波板くらい。「ブリコラージュ(=寄せ集めて自分でつくる)」ということばを知ったのは数年前だが、このことばの対照が「エンジニアリング(=理論や設計図に基づいてものをつくる)」であるということを最近知り、納得した。図面に基づいて完成度の高いものを作ることより、現場ごとにいろんなアレンジを考えてゆくことの方に何倍も面白さを感じる俺は完全にブリコラージュだな、と。プロの建てる家より素人のセルフビルドの家に興味を覚えるとか、プリウス嫌いとか。アポなしで訪れた友人宅で冷蔵庫にあるあり合せで酒の肴をさっと作ってくれる奥さんに惹かれたりとか。

新しい仕事に向けて手鋸を目立てに出した。私4枚、彼も4枚、いずれも代金1万円。1枚あたり2500円。プロが1枚数百円の使い捨ての鋸を使うようになって、目立て職人の仕事は激減した。手鋸は使い方を誤ると折れたりひびが入る。そこを部分的に溶接しなおす職人も昔は普通にいたが今はほとんどいない、と行きつけの道具屋さんが話してくれた。たまに頼まれると三木の職人のもとに送るそうだが、「(ここだけの話)あまり上手じゃないんです。でも他にいないから文句も言えんのんです。目立て職人は、今仕事がないから替え刃鋸のメーカーで働くんです。そうするとやっぱり腕が落ちるんですよ。うちの先代は目立ても溶接もしとったんですが、それらの機械はずいぶん前に全部スクラップに出してしもうて。今から思えば、もっと若い頃にきちんと習うておけば、商売的にも左うちわじゃろうと」と話してくれた。職人が日銭を稼ぐために大手メーカーで働き、飼いならされて腕を落とした結果自分の首を絞めるという構図は大工がおかれている状況と全く同じだ。 手打ちの鋸と替え刃の鋸はまさにブリコラージュとエンジニアリング。エンジニアリングの最たるもののひとつが原発だが、それが必ずしも人を幸せにはしないことを露呈した。なければないでなんとかしようとする思考と、それを実現する知恵と体力と精神力を身につけたいと思う。


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2013.8.3


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