大工塾ネットワーク「杢人の会」
コラム

毎回、担当の大工が日頃考えている疑問や悩みを本音で綴っていきます。

大工の本音
コンテンツ








01:建築の行方
02:工務店の家つくり
04:温故知新
06:覆い隠すものと覆い隠されるもの
07:設計屋と大工の関係とは
08:季節を感じながら
09:ウソ
10:作業場考
11:手間をかけるという事
12:廃棄物は田舎の山に
13:和のつくり
14:サスティナブルな社会へとは?
15:逝きし世の面影
17:愛すべき不良老人たち
18:大工、街に出る…?
19:ゆっくり経年変化する家を建てたい
20:予算と期待度
21:職人不足
22:楽
24:大工最高 10項目
25:住宅のビニールハウス化?
27:改築という仕事
28:年の瀬に思ったこと
29:住む人、設計する人、つくる人
30:大工が自分の家をかまいだすと…
31:新しい地図をつくる
32:プルトニュウムの風に吹かれて行こう
33:震災後あらためて思う
35:震災の地を訪れて
36:遅ればせながら
37:「ありがとう」
38:感謝
39:協労から学ぶ
40:夫が大工になって
41:サボるアリ
42:職人の打ち合わせ
44:メンテナンス
45:「手書き」は消滅させられている
46:薪小屋
47:二つのさしがね
48:ブリコラージュな生き方
49:ブリコラージュ再考
50:ブリコラージュ再再考
51:しょうがない
52:答えはどこに
53:徒然
54:もっときちんと考えねば
55:小さい仕事

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■住む人、設計する人、つくる人

文章を書くことが大の苦手で嫌いな私にとって、このコラムの依頼をメールで知った時、何とかして逃げたい・断りたいという気持ちがまず込み上げてきました。
私の仕事は、大きく分けて工務店業務:3割、大工仕事:4割、設計業務:1割、なんでも屋:2割といった内容で、日々仕事に取り組んでいます。文章を書いて、自分の意見や考えを人に伝えることは、ものをつくり、かたちにすることを仕事にしている私にとって、大変至難の業であり、誰かに頼めないかと安易に考えてしまいます。
.....とは言っても書かないと。

<最近の現場から>
昨年の春に竣工した「Mさんの家」は、住む人は高校時代の部活の顧問のM先生、設計する人は、その部活の先輩、そしてつくる人は後輩の私といった、教師と教え子の関係から繋がった三者が、互いの思いを寄せてつくり上げたものとなりました。

M先生の家づくりは、基本設計が決まると、かつての教え子である私たち(設計者・施工者)を信頼して、「楽しみにしているから、あとの細かい仕様・仕上げや工事の事は、各々、全面的に任せるから、二人でよく話し合って進めてくれ。」との事でした。
そこで設計する人(先輩)と、つくる人(私)は、任されたことによる責任感や住む人(M先生)に喜んでもらいたい、私たちの造った家で快適に暮らしてもらいたい、という思いをもとに、お互いの今までの経験や知識や技術を活かし、設計する側・つくる側の立場として意見を交換し合い、時にはぶつかり合いながら家づくりを進めていきました。
出来上がった家は、一見、蕎麦屋か料理屋かと疑うほど、中に入ると、広々とした玄関ホールとそこに続く音楽室はミニコンサートも開けるスペースに、居間は緑あふれる外の景色が見渡せる大きな開口を持ち、風通しが良く、去年の熊谷の夏の猛暑でもほとんどエアコンを使用せずに過ごせる快適な家となりました。週末には先生夫婦の友人・知人・教え子等たくさんの方々が訪れて、にぎやかに心地良い時間を過ごして頂いているそうです。(半年で、100人以上の来客だとか!)

人と人との関わりが、ますます希薄になっていく昨今ではありますが、家づくりにおいて、住む人、設計する人、つくる人のそれぞれが共に思い描く家をつくるために、気持ちを通わせ形にしていくことが大切であると今しみじみと感じています。そして、その家が完成した時に大きな喜びと充実感で満たされることが、つくり手としての私の醍醐味であると思っています。


Mさんの家

内島工務店:内島章雄

内島章雄

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